たこつぼ型心筋症と急性期脳梗塞

Takotsubo cardiomyopathy in acute ischemic stroke

Yoshimura S, et al. Ann Neurol 2008;64:547-554

アブストラクト

 オブジェクティブ:たこつぼ型心筋症はSAHの合併症としてよく知られている。このスタディの目的は、たこつぼ型心筋症を発症した脳梗塞患者の特性について明らかにすることである。

 メソッド:連続569例の急性期脳梗塞患者(発症から24時間以内に入院)で、7人の患者がたこつぼ型心筋症を発症していた。既報の9例を併せて評価する。

 結果:7人全員女だった。6人は75歳以上だった。最初のNIHSSは3~28点だった。責任病巣は6人の患者で島皮質を含むもしくは島皮質に近い病変で、1例はVB領域だった。5人の患者で10時間以内に異常心電図を認め、他の2例は6日目と12日目だった。心筋症は2名だけ症候性で、残りは無症状だった。全患者でBNPが正常の10倍に上がっていた。既報の患者もほとんど女性で、主にVB系の脳梗塞だった。

interpretation:たこつぼ型心筋症は脳梗塞に珍しい合併症ではない。脳梗塞発症すぐに起きることが多い。そして主に無症状。女性、島皮質への障害が多かった。

Intro

 たこつぼ型心筋症はSAHの合併症としてよく知られている。いろんな機序が考えられている。カテコラミンサージ、多数の冠動脈の虚血、スパズム、心筋炎。精神的なストレスが壱番の要因と考えられている。脳梗塞との関連を明らかにしたい。

メソッド

 2005~2006年に569例の患者が国立循環器病研究センターに集められた。全員少なくとも24時間以上心電図をつけられ、必要であれば延長された。①initialには認めなかったgiant negative Tがみられるようになった、②エコーで心筋のballoon like asynergyがみられる。 この2つを満たしたものを入れた。またpubmedで検索してひっかかったものを入れた。

結果

 569例中7人(1.2%)でたこつぼ型心筋症を認めた。全部女性で、1例47歳女性だったけど、ほかは全員75歳以上だった。6人は心臓・肺疾患の既往あり。肺結核2,AF 3,なし1,PFO1。脳梗塞サブタイプは大動脈原性1、心原性3,その他3.4人の患者が島皮質に梗塞あり。2人の患者が基底核に梗塞あり、島皮質に近いところだった。残りの1人(47歳女性)は解離に伴うbasilar occlusionだった。心筋症は2人のみ症候性。5人の患者で10時間以内にECG変化あり。その他は6日目と12日目。6人の患者で1ヶ月以内にhypokinesisが改善した。

文献では9人の患者をみつけた。うち7人は女性。年齢は60歳~85歳だった。7人中4人がVB系。ECG変化は6日以内に認めた。2人でinitialのECGで異常を認めており、脳梗塞の前に心筋症があったと考えられた。

考察

 SAH患者の18%で心臓左室壁運動異常が起きる。たこつぼ型心筋症はSAH患者の1.2%に起きる。無症状がありえることと、ECG変化がreversibleであること、脳梗塞により症状を訴えられない可能性があることから、under estimateされているかも知れない。日本人に多いのは人種的な違いもあるだろう。高齢女性に多かった。閉経後のホルモン変化が関係しているかも知れない。

 ラットを使った実験では島皮質の障害で頻脈、徐脈、心停止などが起きた。てんかんで島皮質の患者も徐脈を起こす。島皮質は自律神経の脈の調整に重要なのだろう。延髄も同様に脈の調整を行う中枢だ。だからVB系もたこつぼ型心筋症になるんじゃないか。特に高齢女性で、島皮質やVB系の脳梗塞患者では心電図や心エコーに注意しよう。CKMBやトロポニンTといった心筋逸脱酵素はnormalなことも多いが、BNPは著明に上がる。

別の論文面白いのあり

 https://casereports.bmj.com/content/13/9/e235957.long

A biventricular takotsubo cardiomyopathy complication: large thrombus formation to stroke in 150 min

 たこつぼ型心筋症で入院してきたアフリカ系アメリカ人女性。入院後脳梗塞発症。実は発症直前(150分前)に心エコーしていて、心内血栓がないことは確認していた。発症後は心エコーで心内血栓が認められた。たこつぼ型心筋症では150分という超短い間に心内血栓ができて脳梗塞まで起こすかもねって話。やべぇ

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