2017年脳循環代謝学会のランチョン

2017年脳循環代謝学会の聞いたことのメモ。

矢坂医師の公演

心原性脳塞栓症患者の死亡要因第一位は出血性合併症(頭蓋内出血、消化管出血)

ワルファリンは予防薬としてgoodだが、出血せ合併症も増える。

PT INR 2.0-3.0(高齢者は1.6-2.6)が目標であり、逸脱しないことはもちろん大事だが、出血性合併症で運ばれてくる患者の大部分はINR 至適範囲内である(これは、至適範囲内の方が出血しやすいという意味ではなく、N数として圧倒的に至適範囲内にある患者が多いため、絶対数では至適範囲内の患者が多いという意味である。もちろん出血性合併”率”に関してはINR 3.0以上が多いはずである)。

ワルファリンの管理については非常に難しい点が多いが、そのため出血性合併症が起きうることの説明と、出血性合併症が起きた際の対処が必要。

・止血剤

①VitK製剤 効いてくるまでに時間がかかる。肝臓で凝固因子産生が活性化されるが、実際に増えてくるまでに半日かかる

②新鮮凍結血漿(FFP) 大量輸血が必要。出血傾向の是正にはおおよそ4単位、800mlの投与が必要。心不全患者への水分負荷を避けるには60-80ml/h程度とする必要があるので、全投与に10時間程度かかる。迅速な是正には期待できない。さらに、解凍までに1時間もかかる。

③第9因子複合体 = 4F-PCC(プロトロンビン複合体製剤) めちゃくちゃ速い

第9因子複合体・・・血友病などの観点からの表現

4F-PCC・・・脳卒中領域でプロトロンビンを補充するという観点からの表現

第9因子複合体製剤(4F-PCC)に入っているもの

Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子、プロテインC、プロテインS(製剤によってⅦ、ProteinC、ProteinSの含有量が違う)。あれ?生理的凝固阻止因子のProtein C、Protein Sも入ってるの??

4F-PCCはFFPよりも迅速、投与溶媒量が少ない(=心不全への危惧が少ない)、合併症が少ないとう点でメリットがある。

4F-PCCは最強だけど、半減期が最も短い第Ⅶ因子で4.2時間、最も長い第Ⅱ因子で59.7時間なので、持続時間で問題がある。だから、4F-PCC + VitK製剤がベスト。4F-PCCで初期の12時間をカバーし、遅れてVitKによる肝臓での凝固因子合成が行われるので、持続して凝固を保てる(資料では、補助人工心臓などで後の血栓化が危惧される場合は、4F-PCCのみの投与も考慮すべきと書いてある)。

フロアより

4F-PCC投与30分後にINR低下を確認してt-PA投与は可能か?

禁忌とはされていないが、凝固因子補充となるので、血栓症のリスクがあがることが危惧される。出血性合併症の場合はそのリスクを差し引いても止血による救命が求められる。ダビガトランに対するイダルシズマブは、中和剤であり、凝固因子補充ではないので、イダルシズマブ投与後にt-PAも考慮されている。

→4F-PCC投与後のt-PAは症例報告レベルで発表されているが、その効果に関しては一定の見解がない。

INR 1.8-1.9で出血してきた症例はどうしたらいいか?

日本ではINR 1.6-2.6も至適範囲とされており、少なくともINR 1.5以下にするように使用していいのではないか。また、外科治療を行う症例ならば1.3以下を目指してよいのではないか。

などなど。勉強になりました。

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